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Lee-Byung-hun addicted

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Femme de ma vie ~Homme de ma vie

Femme de ma vie ~Homme de ma vie <1> 



「フランス文化親善大使か・・・」

揺はスタッフと夕食をとりながらホテルの窓からパリの夜景を眺めていた。

結局、ビョンホンには年末に会ったきり。

彼女は夕方手にした「LeMonde」に彼の記事が載っていたことに驚いていた。

そこには彼が韓国とフランスの国交120周年記念の式典に招かれ、

フランス文化親善大使に任命されたと書かれていたのである。

「とにかく元気そうでよかった・・・。でも秘密にしてるなんて。」

悪戯っぽく笑う彼の顔を想像して自然と笑みがこぼれた。

「揺、何笑ってるの?」

と怪訝そうなスタッフ。

「えっ、ああ、なんでもない」

揺はあわてて夕食のチキンを口に運んだ。



ビョンホンとの結婚の準備のため一度は仕事量を減らした揺だったが、

かえってそのせいで予期せぬ仕事まで引き受けるはめになっていた。

今、パリにいるのもそんな成り行きで引き受けた仕事のため。

ソルラルのために予定を空けていた揺であったが

1月の終わり旧知の仕事関係者にどうしてもと言われ

日本映画の長期フランスロケのコーディネーターを頼まれてしまった。

全く畑違いの仕事だし予定もあるからと断ったが、

担当者が急病になり、他の候補も他の仕事との調整がつかず、

どうしても代わりが見つからないというので臨時に引き受けた仕事だった。

当初、代わりの人が見つかるまでという約束だったが、

フランス語にもパリにも精通している揺は、

スタッフの信頼も日に日に厚くなり、そのまま続ける形になっていた。

ちょうど他の仕事を入れていなかったために、

なし崩しで続けても何の障害もない状況だった・・・仕事上では。


障害があったのはプライベート。

約束していたソルラルのソウル行きはキャンセルせざるを得なくなった。

ビョンホンには事情を説明し、彼も快く理解してくれた。・・・

パリに来てから半月。彼と電話で話したのは2回だけだった。

それも、仕事に追われる中ほんの数分。

じゃあ、後でかけ直すと言ったきりかけずじまい。

メールも返事をしようと思いながら寝てしまう日が何日も続き、

返信していないメールがBOXにたまっていく。

(今頃ソウルは夜中かしら。会いたい・・・。)

そんな想いとはうらはらに彼女の連絡は滞りがちになった。

電話をかけようと思えばかけられたのかもしれない。

メールをしようと思えば打てなかったわけでもなかった。

問題なのは仕事に夢中になると無意識に他のすべてを我慢してしまおうとする彼女の性格。

畑違いの仕事は大変だったが毎日新鮮だしやりがいもあった。

日々こなさなければならない作業で頭がいっぱいだった。

そこには大事な『彼』でさえも居場所がなかった。

そして居場所を用意できない自分を抱え彼女は当惑していた。

「彼のためならすべてを捨てられる。」

一時はそう確信していたのに・・今の自分を見ると自信がなくなる。

仕事に手いっぱいで彼のメールにさえ返事が出来ない自分を前に揺は「揺れて」いた。




「ああ~~。お父さんそれはそうじゃなくてですね。」

ビョンホンはXBOXのコントローラーを幸太郎からひったくりながら言った。

「ちょっとビョンホン君黙ってなさい。今いいところなんだから。」

取り返す幸太郎。

「いやいや、大切なところだからこそお教えしますからっ!」

またビョンホンが取り上げようとする。

「だから、いいってばっ!」

・・・「あの人たちはいったい幾つなのかしら。」

ソファにゆったりと腰掛けてゆず茶をすすりながら

綾は半ばあきれ返りながらつぶやいた。

「本当に大人気ない。実は主人もああいう人だったんですよ。」

ビョンホンの母は二人を見つめながら懐かしそうに言った。

「あら、やっぱりそうですか。

ビョンホンさんを見ていればきっととても温かい家庭で育ったということはとても良くわかりますもの。

きっと楽しかったんでしょうね。」

と綾。

「お二人が来て下さって本当に感謝してるんですよ。

揺ちゃんが急なお仕事で来られなくなって、

ビョンホンったらすっかりしょげちゃって。

まるで去年の秋に日本から帰ってきた後、

揺ちゃんから連絡がこなかった時みたいに」

笑いながらビョンホンオモニが言った。

「本当に申し訳ありません。

大切なお墓参りがあるって伺っていながら。

あの子は頼まれるとなかなか断れないところがあって。

決してこちらを軽んじているのではないと思うのですが。」

綾は身振り手振りを駆使しながら習いたての韓国語でそう伝えた。

「ケンチャナヨー。よくわかってます。

あの子も同じだから。」

ビョンホンオモニは笑いながらそういった。




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